科学への入り口

2025年3月12日水曜日

CMM 東京国立博物館


東京・上野。ここに世界的にも稀な自然史と技術史の2つの分野を持つ博物館がある。国立科学博物館(科博)だ。



1877年に開館した科博は、日本最古にして最大の博物館。当時、近代化の中で西欧の進んだ科学技術を取り入れるため、科博は社会教育施設として設置された。科博では約25,000点の展示をしており、日本列島の成り立ちや生態系を展示する「日本館」と、地球環境の変動や科学技術の進歩を展示する「地球館」がある。

 

最初に入った日本館には、日本列島の多様な生き物がずらりと並んでいる。頭上に迫る恐竜の標本や、かがまなければ見えない土壌の資料に夢中になる。その内にまるで、実物を絵や写真で示し、分類して配列するような図鑑の中に入り込んだ気分になった。


地球館に入ると雰囲気が変わり、自然から科学技術の世界へと誘われる。「方位磁石はなぜ南北の方向を示すのだろう」という、普段は意識しない問いが目に入った。小学生の頃、理科の授業で方位磁石を使って実験をしたことを思い出し、童心に返ったような好奇心が湧いてきた。方位磁石が北をN極、南をS極と指すのは、地球のもつ磁石として性質、地磁気にあるそうだ。例えばスマホにも地磁気が使われている。



さらに地磁気のしくみに興味を持ち、地球内部を模した模型を動かしていると、不意に声をかけられた。顔を上げると、「かはくボランティア」の方が展示の解説をしてくれるという。熱意溢れる解説をヒントに再び展示と向き合う。


地球内部には電気を良く通す液体がある。それが地磁気の中を流れると電流と磁力の働く空間が生じ、その繰り返しによって地磁気が維持されているという。


  

ふと見上げると、ドバトの標本があった。

「なぜここに鳩?」と疑問に思ったが、鳩も地磁気を利用する生き物だという。渡り鳥やミツバチも地磁気を感知し、飛ぶ方向を定めているそうだ。身近なところで自然と技術は繋がっていると実感する。



展示室を振り返ると、図鑑のように展示を辿っていた。科博は展示と向き合い、聞いて、触れられる、まるで「体験型」図鑑のようだ。ページをめくるように一歩進むごとに、一つ前の展示と今見ている展示が点と点で繋がる面白さがある。これは自然史と技術史を同じ建物で展示しているからこそ感じた体験だった。また、体験することで生まれる好奇心があり、科学を身近に感じられる。これが科博の「体験」を大切にする理由なのかもしれない。


 

外に出て、次の行き先へ進むためにスマホのマップを開く。公園にいる鳩も地磁気を使って次の行き先を探している。

科博は科学と日常を結ぶ博物館。身近なところに科学への入り口は開いている。




住所:東京都台東区上野公園 7-20

アクセス:JR上野駅(公園口)から徒歩5分/東京メトロ銀座線・日比谷線「上野」駅(7番出口)から徒歩10分/京成線「京成上野」駅(正面口)から徒歩10分

開館日:基本火曜日から日曜日(月曜日は祝日の場合)     

開館時間:9:00 ~17:00(入館は16:30 まで)

キャンパスメンバーズが使える範囲:常設展、企画展は無料/特別展は割引


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