写真は美術館で「見る」ものだろうか。スマホで誰でも写真を撮ることができる今、東京都写真美術館で写真を「見る」と、大切にされた記憶、時代、表現の中に没入する体験を楽しめる。
東京都写真美術館が開館したのは1995年。この年は阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件に日本社会が衝撃を受け、報道写真への注目が高まった年だった。
写真は過去の出来事の一瞬の凍結。写真によって、自分では直接見えていない、世界の驚くべき瞬間が見えるようになる。そして、複写され大勢の人に記憶が共有されていく。しかし写真を誰でも簡単に撮れるようになった今、写真の文化が忘れられつつある。そのため写真が社会や芸術にどのような役割を果たしているのかを伝え、変遷する写真文化を忘れないよう保存する場所として、常設展のない東京都写真美術館ができた。
また、東京都は「写真文化施設の設置」を目指しており、サッポロビールは恵比寿工場跡地に文化都市を創る構想を発表していた。双方の願いが叶った場所として選ばれたのが、恵比寿の地だったという。
恵比寿ガーデンプレイスは、非日常の楽しみの提供を目指している。そんなガーデンプレイス内にある写真美術館は世界的にも希少な美術館であり、普段触れることのできない写真を見ることができる。
2枚目の展示のそばに書かれていた「木村専一」という名前をもとに、足早に「写真と映像に関する専門図書室」を目指した。4階にあるこの図書室では、開催されている展示会に合わせて本棚が次々に作りかえられていく。本を読んでみると、2枚飾られていた写真の片方は雑誌「フォトタイムス」の編集主幹であった木村が欧米の写真情勢を視察しに行った際、譲渡された複写作品であることが分かった。
他のアート作品とは違い、写真は原本の複写ができる。あらゆる場所でまったく同じ写真を同時に見ることも可能で、複写することで別のテーマを渡り歩く面白さを感じられる。
ただお洒落な場所にある美術館ではなかった。歴史を、社会を伝えるために展示が変わり続けていく。また非日常を体験するために、写真を見に来たくなる。
[アクセス] 東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
JR「恵比寿駅」東口から徒歩約7分
[開館時間] 10:00-18:00(木・金曜日は20:00まで)
[無料で見られる範囲] 収蔵展は無料/企画展は割引
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